中板橋駅の内科・腎臓・リウマチ・皮膚科|隼聖クリニック

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「潜在性甲状腺機能低下症」にご用心

喉ぼとけのところに3~5㎝くらいの大きさの蝶ネクタイのような形をした「甲状腺(こうじょうせん)」と呼ばれる臓器があります。甲状腺は甲状腺ホルモンというホルモンを出し、子供の成長や人体の活動性の維持に重要な役割を果たしています。

【甲状腺の場所】

甲状腺の病気の中には、甲状腺ホルモンが出すぎてしまうバセドウ病(甲状腺機能亢進症)、逆に甲状腺ホルモンが不足してしまう橋本病(甲状腺機能低下症)、甲状腺にできる悪性腫瘍である甲状腺癌などがあります。甲状腺の病気の頻度は意外と高く、男性では50~100人に1人、女性では30~60人に1人と、より女性に多い傾向があります。

甲状腺ホルモンが出すぎると、動機や血圧上昇、筋肉の痙攣などがあります。一方、甲状腺ホルモンが不足すると、冷え性や低血圧、便秘、脱毛、手足のむくみといった症状が出ます。

【甲状腺機能亢進症】
(発汗、動悸、高血圧、不眠など)
【甲状腺機能低下症】
(疲労感、冷え性、便秘、脱毛、手足のむくみなど)

甲状腺の機能異常を疑う症状もあって、血液検査で甲状腺ホルモン値が異常な場合はそれぞれに適した治療を受けることになりますが、甲状腺機能低下症の中には、甲状腺ホルモン値自体は正常なのに、状況により治療が必要となる「潜在性(せんざいせい)甲状腺機能低下症」という病気があります。
そもそも、甲状腺ホルモンは脳の下垂体というところから分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の作用により甲状腺から分泌され、一般には、FT3, FT4として測定されています。甲状腺ホルモンは正常範囲でも、TSHが高値の状態を「潜在性甲状腺機能低下症」と呼び、女性・高齢者に多く、健康な人の4~20%、人間ドック受診者の4.7%(男性3.6%, 女性5.8%)に見られます[中島康代ほか:潜在性甲状腺機能異常症の病態と治療.日本臨床70(11):1865-1871,2012]。

潜在性甲状腺機能低下症では、動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患が増えることや、認知機能の低下と関連することがわかっており、TSH≧10μU/mL(正常は0.5~4.49μU/mL)の場合と、妊娠希望の場合(不妊や児のIQ低下に影響を及ぼす可能性があるため)については治療が勧められます[JAMA. 2004 Jan 14;291(2):228-38.]。

TSHが10μg/mL以下でも、ホルモン補充療法によりその心血管イベントのリスクが軽減されるとの報告があり、現在は、高血圧症・脂質異常症・糖尿病・喫煙など動脈硬化が進行しやすい病態では治療が推奨されています[JAMA 304(12):1365-1374,2010][ Arch Intern Med 172:811-817,2012](但し、心疾患のない75歳以上の高齢者を除く)。
高コレステロール血症の患者さんの4.3%に潜在性甲状腺機能低下症を認め、甲状腺ホルモン補充により総コレステロール値やLDLコレステロール値も改善するとされています[ホルモンと臨床 56:57-75,2008]。一方で、潜在性甲状腺機能低下症との関連が指摘されている認知障害に対する治療の有効性は、今のところ確立されていないようです[Endocr J 57(3):253-258,2011]。

甲状腺が大きいと言われたことのある方、疲れやすい、ダイエットをしても食事に気をつけてもコレステロールが下がりにくい方などは、甲状腺機能異常による症状かもしれません。